阪神淡路大震災 20 周年事業

加川広重 巨大絵画が繋ぐ東北と神戸 2015

「宮本佳明 加川広重 による作品解説」 

日時:1月17日(土)16:00~
会場:KIITOホール(1F)
解説:宮本佳明、加川広重

 
 宮本佳明「福島第一原発神社」
「あいちトリエンナーレ2013での展示風景」photo:怡土鉄夫事故を起こした原子炉建屋にアイコンとなる和風屋根を載せ、原子炉を鎮め、神社ないしは廟(マウソレウム)として丁重に祀るというプロジェクトである。その目的は、今後1万年以上にわたって溶融燃料を含む高レベル放射性廃棄物を現状のまま水棺化して安全に保管することにある。なぜなら200トン近い溶融燃料をすべて回収することも、それにともない発生する大量の高レベル放射性廃棄物を場外搬出することも事実上不可能だからである。いつか廃炉を諦めた時、最も重要なことは「それ」が危険であるということを明示し続けることである。しかも、文化や言語さえも変わっているであろう1万年以上後の人類(それは日本人なのか?)に対してである。危険なものを危険であると知らしめること、それもまた建築の大切な役割である。原子炉を収める覆屋は「建屋」と呼ばれた。そもそも建築でさえなかった。ここではその役割を巨大な和風屋根に託している。

加川広重「フクシマ」
2013年の秋、原発事故の影響で居住が制限されている福島県大熊町、富岡町、浪江町を訪れ、2年半もの間人が住んでいない町、荒れ果てた田畑、津波の被害全くそのままの状況などを見ました。宮城、岩手で震災の被害を見てきましたが、全く異質で、不気味な問題が解決しないまま存在していることを肌で感じました。福島で取材を行い、現地の方のお話を伺う内に、なんとか福島の皆さんの怒りや悲しみ、そして汚染された大地や水、自然の怒りのようなものを表現したいと思うようになり、この作品のイメージが出来上がっていきました。
巨大絵画「フクシマ」は、福島第一原発の建物をモチーフに、様々なイメージを組み合わせています。建家内部に福島の汚染された土や水のイメージ、人が住まなくなり雑草が生い茂っている様子、牛、イノブタなどを描くことで、福島が遭遇している悲しみを総合的に描こうとしました。

宮本佳明
建築家、大阪市立大学大学院工学研究科兼都市研究プラザ教授。兵庫県生まれ、東京大学工学部建築学科卒業、東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修士課程修了。博士(工学)。1996年第6回ヴェネツィアビエンナーレ建築展(共同作品)金獅子賞。1998年「『ゼンカイ』ハウス」でJCDデザイン賞ジャン・ヌーベル賞、JIA新人賞。2007年「クローバーハウス」で日本建築家協会賞。2008年「『ハンカイ』ハウス」でJCDデザイン賞金賞。2012年「澄心寺庫裏」で日本建築学会作品選奨。主著に『環境ノイズを読み、風景をつくる。』(彰国社)、『Katsuhiro Miyamoto』(Libria)。

加川 広重
1976年宮城県蔵王町生まれ。2001年武蔵野美術大学油絵科卒業。2003年より大画面の水彩画の制作を始め、せんだいメディアテークなどで「加川広重巨大水彩展」を計13回開催。2009年に仙台市天文台で巨大な星座図を発表。2012年に改訂された宮城県造形連盟著「美術資料集」に作品掲載。震災後は2011年6月にチャリティー作品展を開催し、売上金全額の約23万円を寄付。2012年1月に「雪に包まれる被災地」を発表。2012年8月には、同絵画を舞台背景に様々なアーティストが震災への想いを表現するイベント「かさねがさねの想い」を主催。2013年3月と2014年1月には神戸で巨大画を展示。2014年8月に「第13回加川広重巨大水彩画展 巨大画で描かれる『フクシマ』」をせんだいメディアテークで開催。平成24年度宮城県芸術選奨新人賞受賞。